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【2024/05/15 15:17 】 |
不当解雇
このブログでは、企業の顧問弁護士をしている立場から、日々扱う問題のうち、一般的な情報として役に立ちそうなものをメモしています。テーマは幅広く扱っていますが、未払いの残業代請求の問題などの労務問題が最近では増えているので、そのような傾向を反映した形でのテーマのバラつきはあるかもしれません。

今回は、裁判例において、不当解雇の判断がどのようにされているかを以下に紹介します。

本件解雇につき,解雇事由の存否及び解雇権の濫用の有無について検討する。
(1)本件ビラの配布について
ア まず,本件ビラの内容は,被告が労働組合の組合員を不当に脅迫したり,差別的取扱いを恒常的に行う法人であること,職員の意向ややり甲斐,資格や経験を無視した突然の異動を行って,職員のやる気を低下させており,福祉サービスの向上は困難であること,利用者第一と口にしながら,人件費を掛けないよう利用者家族に宿直業務をやらせたり,寄付金の募集を多数回行い,言うことと行動が正反対であること,労働組合と話合いによる問題解決を図ろうとせず,刑事罰が予定されている不当労働行為を益々エスカレートさせ,労働組合をやむなく県労委に救済の申立てを行うに至らせたこと等を記載しており,本件ビラを読んだ事情の知らない通常人は,被告に対して悪印象を持ち,被告の社会的評価を低下させるものと認められるから,本件ビラの配布は,被告の名誉,信用を毀損するものというべきである。
 しかしながら,本件ビラの配布は,労働組合の活動の一環として行われていると認められるから,このような場合には,本件ビラで摘示された事実が真実であるか否か,真実でないとしても真実と信じるについて相当な理由が存在するか否か,また,表現自体は相当であるか否か,さらには,表現活動の目的,態様,影響などの一切の事情を総合し,正当な労働組合活動として社会通念上許容される範囲内のものであると判断される場合には違法性が阻却されると解されるし,仮にその許容範囲を超えるものであっても逸脱の度合いが低いと判断される場合には違法性の程度が低いと解される。以下,このような観点から,検討する。
イ 確かに,前記の認定事実からすれば,「職員への脅迫事件」について「襟首をつかみ」「脅迫し」たとまでは認められないし,「けんか両成敗」として処理したことも認められない。「悪貨が良貨を駆逐すると文書配布」の件も,乙山常務が組合員のことを悪貨と例えたと認めるだけの証拠はなく,全部署に運営会議の議事録を配布した事実もなかったものである。また,「資格や経験を無視した異動が頻発」についても,原告は証拠として(証拠略)を提出するものの,本件配転以外では,D1職員の異動の他は何ら客観的な裏付けがないから,少なくとも「頻発」とは認められない。「差別のオンパレード」についても,本件ビラが主張する各組合員に対する発言や措置等について,組合潰しや排除の目的・意図が認定できるものがどれだけあるのか疑問である。
 しかしながら,B園長がCに対し,原告とつるんではいけないと発言した事実やCに対して残業手当を支払わなかった事実,さらに団体交渉の際の被告の対応及び事前協議なしの就業規則変更が不当労働行為に当たると労働委員会で判断されており,不当労働行為性を否定された各事実(本件配転や職員の異動,厨房での外部委託の発言や悪貨が良貨を駆逐するとの発言の事実など)についても,本件ビラの配布当時,組合と被告が厳しく対立していたことや,それまでの団体交渉等における被告経営者らの組合に対する発言,態度等にかんがみれば,組合員であることを理由に「脅迫」されたり,「資格や経験を無視した異動」をされたり,「差別」を受けたと誤解してもやむを得ないところがあったと解されるから,摘示事実につき,真実と信ずるにつき相当の理由があったと認めることができる。
ウ なるほど,原告らは,本件ビラの一部を被告の施設からはるかに離れたF園長宅やI室長宅及びその周辺に限定的に配布していることからすれば,本件ビラの配布目的のうちには,被告幹部を個人的に狙い打ちして嫌がらせをしようとの意図があったことは明らかであり,悪質というほかない。しかしながら,本件ビラの大半は被告の利用者の多い地域に配布されていると解されること,配布方法は郵便ポストに個別に投函していくという穏当な方法であること、本件ビラの表現についても,被告自体の社会的評価を低下させるものの,特定の個人名を挙げて攻撃するものや著しく過激な表現等は見当たらないことなどからすれば,本件ビラ配布の目的は,全体としては,被告における職員及び組合の苦しい現状を地域住民に知らしめ,組合活動に理解と支援を求めるものと評価することができる。
エ その他,現実に被告が被った信用被害の程度,本件ビラの配布が職場秩序に与えた影響等本件に現れた一切の事情を考慮すれば,本件ビラの配布は,正当な労働組合活動として社会通念上許容される範囲内のものとして違法性が阻却されるか,そうでないとしても,その違法性の程度は,懲戒解雇に値するほどに重大なものではないと認めるのが相当である。 
(2)与薬過誤及び責任転嫁について
 原告による与薬過誤1,2は軽視できないものであり,就業規則48条3号の懲戒事由に該当するものと認められる。
 しかしながら,前記認定のとおり,与薬過誤1,2の故にF園長は原告の事故等報告書を始末書とみなす扱いをしているのであるから,被告は,与薬過誤1,2をもって就業規則49条2号のけん責処分を行ったというべきであり,また,与薬過誤1,2に加え原告の責任転嫁をもって,事実上の不利益処分というべき本件配転を実施したのであるから,その上に同じ与薬過誤1,2及び責任転嫁を理由に原告を懲戒処分とすることは,二重の不利益処分であって,許されないというべきである。
 したがって,被告主張の与薬過誤及び責任転嫁は,懲戒解雇の事由とすることはできない。
(3)本件議事録の無断謄写について
 原告と被告とは,県労委の救済申立て以後は実質的に紛争当事者の関係にあり,労働委員会の紛争解決手続といえども手続的正義に則って行われなければならないから,いくら入手し易い資料とはいえ,自己の所有や占有下にないものであり,しかも園生の個人情報が記載されたものを,被告側に無断で取り出して謄写することは許されるべきでなく,審査手続中における物件提出命令(労働組合法27条の7)の申立てをするなど,正規の手続を経るべきであったと解されるから,本件議事録の無断謄写は,就業規則48条3,4号に該当するというほかない。
 しかしながら,本件議事録の謄写については,専ら労働委員会での証拠利用目的のものであったと認められ,それ以外に利用された形跡はない。また,原告は,被告から証拠提出された本件議事録の写しの入手経緯について釈明を求められても誠実に回答しておらず,反省の態度を示していないが,本件議事録の記載内容,その写しの利用目的,利用態様,それによる影響の多寡等の事情を勘案すると,本件議事録の謄写やその証拠提出が懲戒解雇に値するまでの著しい違法性を有するとは認められない。
(4)以上によれば,本件解雇は,解雇事由が存在しないか,形式的に存在しても正当な理由が未だ認められないから,解雇権の濫用というほかない。したがって,解雇手続の相当性を判断するまでもなく,本件解雇は無効である。
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【2010/12/10 16:04 】 | 不当解雇
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